2007年01月20日

コラム「父のひとりごと」(朝日新聞 2002年9月)

父のひとりごと@――妻が出勤の休日は

会社員の妻にはときどき休日出勤がある。

そんな日は朝から晩まで2人の子どもの面倒をみなければならない。
これが結構たいへん。

1歳の息子がいまだオムツ&母乳なので遠出も出来ず、
「明日はどうしよう?」と前の晩からプレッシャーがかかる。

翌朝8時半、朝食の支度を済ませた妻は「よろしくねー」と颯爽と出勤。

さあ、長い一日のスタートだ。
とりあえず近くの公園にでも、思っていたが雨でいきなり出ばなをくじかれる。

朝食後、仲良くおもちゃで遊んでいた2人もそろそろ飽きて、4歳の娘が
「パパー、どこか連れてって」。

仕方なく近所の図書館へ行き、紙芝居で一緒に遊ぶ。
その後はファミレスに移動しランチ。休日くらい昼からビールを飲みたいがグッと我慢する。

午後3時、遊び疲れた2人がやっと昼寝。
これ幸いと、僕も隣にゴロンと横になるが、ふと妻のことを思う。

「僕が仕事で忙しくしているときは、きっといつも彼女がこうなんだろうな……」

「ママ〜」。数時間後、息子のグズる泣き声で目がさめる。
抱っこして機嫌をとりなしているとやっと妻が帰ってきた。

「ごくろうさま。どう?仕事している方が楽でしょ。でも今度は家事もやっておいてね」

安藤哲也 書店員(39歳)

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父のひとりごとA――保育園送迎の楽しみ

保育園の送り迎えが好きだ。

特に夕方のお迎えはワクワクする。
娘を迎えに行くだけなのに、なぜか恋人と待ち合わせをしているような感覚になるのだ。

帰り道に娘といろいろ「きょうの出来事」を話しながら帰るのも楽しい。
「パパ、アイス買っていこうよ」「ママには内緒だぞ」

寄り道もまたいいものだ。

こんな楽しいことを妻に独占させるなんてもったいない!と僕は思うのだが、
保育園を見てみると父親の姿はほとんどない。

まあ普通の会社員の就業時間を考えると、夕方のお迎えは無理なのかもしれない。

でも本当にそうなのだろうか?

僕の場合、あらかじめ「火曜と金曜はお迎えがあります」と会社にアナウンスしておいて、
なんとなく周りの承諾を得ていた。

でも、お迎えのある日は早く仕事を片付けるよう朝から心がけたし、
「育児にかまけてるから売上が落ちた」と言われたくなかったので、
実績を残すよう昼や深夜の仕事に励んだ。

しかし夕方6時に帰る理由は、お迎えがしたいだけではない。

園で保母さんやほかの子のお母さんと話したり、
家でゆっくり家族と過ごしたりすることが大事なのだ。

それに仕事のヒントもそんなところから生まれてくるような気がする。

よし、きょうも早く帰ろう!

安藤哲也 書店員(39歳)

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父のひとりごとB――――欠かせぬ毎朝の家事

共働きのわが家はいつも時間との闘いだ。

平日の朝は、7時に妻がまず起きて洗濯機を回しながら朝食を作る。
その生活音で目覚めた僕は、子どもの保育園の支度だ。おっと、連絡帳を忘れないように。

一段落したところで4歳の娘と2歳の息子を起こし、なんとか朝食を食べさせ、
妻は化粧もそこそこに出勤。

僕は子どもたちを自転車の善後に乗せ保育園へ向かう。

預けた後、いったん帰宅。

シャワーで汗を流し、通勤前の1時間で食器の洗い物をし、オモチャや本が産卵する部屋にザッと掃除機をかけ、ゴミだしをしてそのまま出勤となる。

フー。

もう慣れたとはいえ、家事ってやっぱりシンドイ(二日酔いだと、もっとシンドイ)。
うまく回っている時はいいが、いつもそうはいかない。

夫婦ともども仕事が忙しくなると洗濯物はたまえい、家の中は荒れる。
するとツマラナイことで喧嘩も起きる。

清潔でいることも大事だが、精神的にも健やかであるためには、やはり毎日のレギュラー家事は欠かせないのだ。

「パパ、あたし、5歳になったらお方付け、ちゃんとやるからね」

そんな殊勝なことを言う娘ではあるが、
今朝起きると、きのう洗ったばかりのシーツに早速おねしょ。

「オー・マイ・ゴッド!」

今日も朝から洗濯だあ。

安藤哲也 書店員(39歳)

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父のひとりごとC――親も育てる「育自書」

育児に関するマニュアル本はほとんど読まない。

子どもの成長には個人差がある。情報を鵜呑みにして、わが子を追い込みたくない。
でも育児や家事で悩みつかれることもある。そんな時、僕はこんな本をひもとく。

『ぼくが父であるために』(春秋社)は、同世代の医者が書いた子育て奮闘記。

とかく男が父親になったとき、何に出会い、驚き、怒り、悲しいのかを誠実に語る姿に共感。
その切なさを通して、ひとがいかにして「父」になるかが、分かる本だ。

翻訳絵本『パパと10にんのこども』(ひくまの出版)もいい。

子どもの世話でくたびれきったパパは、ある日一人で船旅に出た。でもなぜか愉しくない……。

英国の現代小説『パパのさがしもの』(PHP研究所)は、
男の本音が炸裂する抱腹絶倒の家族物語。

責任と義務、夢とあこがれのジレンマを抱えた「パパのしあわせ探し」の結末は
ちょっと痛いが、自分がもっているものを大事にすることの意味を教えてくれる。

子どもを寝かしつけた後に読むこれらの本は、僕の育児バイブル。

そして自分を奮い立たせる「育自書」でもあるのだ。

安藤哲也 書店員(39歳)

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父のひとりごとD――目合わせ 耳傾けて

「ねえねえ、パパ〜」

最近、娘は僕の顔を見てはよく話しかけてくる。
言葉が達者になったので会話が楽しいのだろう。

目を見てなるべく話すようにするが、仕事や家事で忙しかったりすると、
ついうるさがってツッケンドンな答えになる。

すると娘の表情はたちまち曇り……。

ちょっとした日常の出来事だが、こういうことが大事なのだと思う。
人が生きていくためには、自己を肯定する気持ちが必要だ。

とくに幼い子どもは親に無視されたりしたら、
自分がこの世にいる意味がわからなくなってしまうだろう。
何か特別なことをするより、いまはできるだけそばにいて話を聴いてあげたい。

娘が生まれて5年。

父親であることの喜びは幾度となくあったが、
結局まだ自分は「父」になれていないような気がする。

父とは何か?
これから父親として子どもたちに何ができるのか?
その答えは誰も教えてくれない。

でもたぶん、ヒントをくれるのはいちばん身近にいる娘や息子なのだろう。

今朝も自転車に2人を乗せ保育園へ行く。
いつもながら上り坂がつらい。娘の声が飛ぶ。

「パパ、がんばれー。しっかりこいで!」

それは父親としての僕へのエールに聞こえた。

安藤哲也 書店員(39歳)


posted by 安藤パパ at 17:56| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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